ダイエット中だけど甘い恋を食べてもいいですか?
それからの響さんは、心ここにあらずといった風で、ずっと黙り込んだかと思うと、また熱い眼差しを文香さんに向ける、その繰り返しだった。

「私、お手洗いに行ってきます。」

文香さんがバッグを持って席を立った。

すると間髪入れずに響さんも「俺もちょっと」と言って文香さんの後を追って行った。

私はすぐに気づいてしまった。

響さんは文香さんに恋したのだ。

この短い時間の中で、ふたりは恋に落ちたのだ。

きっと今頃、私達に隠れて連絡先を交換しているに違いない。

思った通り、響さんと文香さんは微笑み合い、なにかを話しながら、ふたり仲良く席に戻って来た。

そんなふたりを間近で見せつけられ、途端に息苦しくなった。

私の胸はキリキリと痛みを訴えていた。

鼓動が早くなり、脳が思考停止を求めている。

いま見せられた一連の出来事が夢であって欲しいと心が叫んでいる。

でも・・・そっと目を閉じて再びゆっくりと目を開いても、それはまぎれもなく現実だった。

ふと勇吾君を見ると、呑気な顔でコーヒーを飲んでいる。

・・・馬鹿な勇吾君。

あなたはきっと近い将来文香さんに捨てられる。

そして私の恋も・・・エンドロールを迎える。

文香さんは、私にはもう何の興味もないようだった。

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