恋なんかはじまらない
「・・・」
繭はあたしをしばらく見つめて、
「ほら、やっぱそんなんじゃないんでしょ?じゃあたしが陽平と付き合っても関係ないよね?」
「…うん」
…あたし
何でこんなショック受けてるんだろう。
胸が痛い――。
「そういうこと」
陽平はそう言い、繭の手を引いた。
「俺と志稀はそんなんじゃねぇから。
てかありえねー」
陽平の言葉は
まだ恋を知らなかったあたしには
あまりにも痛かった。
「行こーぜ」
「うんっ」
あたしは、どんどん遠ざかっていく二人を呆然と見つめていた。
途端に、胸が激しく苦しくなった。
「いっ…」
あたしはその場にしゃがみ込み、
嗚咽を漏らして泣いた。
「…痛いよ…」