恋なんかはじまらない
「だから、そんな難しく考えなくていいってこと。すぐ分かることじゃん」
「わ、分かんないよっ。だから今、聞いてんのに」
理穂の言ってることが分からない。
簡単なことなの?
あたしには、すごく難しく思えるんだけど。
「まぁ色々あるけど、1つはその人と一緒にいて楽しい、とか」
…陽平といると、楽しい。
小さい頃からずっと一緒で、あいつが隣にいるのが当たり前みたいになってた。
「後は…気がついたら目で追ってるとか」
…そうなのかな。
自分では気付かなかっただけなのかな…
今思うと、いつも視線の先には陽平がいて。
無意識に、目で追ってた。
「その人のことを想うと、胸が痛くなる、とかね」
「・・・」
「あはっ、なーんてね。
我ながらクサいわー」
理穂は笑ったけど、
あたしはまるで、自分の心の中を全て見られたような感じだった。