結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
そう思った聖は、思い返すと「不味い」と言って捨てているが、本当に不味いわけではないと気づいた。
ただ怒りたいだけ。
味もずっと食べていたような味で食べられないわけじゃないが、素直に食べる事が許せないと思って、わざと「不味い」と言って怒って捨てているのだ。
柚香がいない今は…。
素直に温めて食べ始めた聖。
懐かしい味が、どんどんと染み渡ってきて…。
気づけば頬に涙が伝っていた。
食べ終わった聖はもう一度ノートを見て見た。
よく見ると、ノートはちょっと古くなっていた。
文字も見覚えのある文字で…柚香が書いたものではない様だ。
ガチャッと、玄関をかける音がした。
もしかして柚香が帰って来たのか?
そう思った聖はちょっと急ぎ足で玄関へ向かった。
玄関にやってくると。
「ただいま聖」
なんと、アメリカに赴任していた聖龍がいた。
「父さん…いつ帰国したの? 何も連絡なかったけど」
「…連絡は入れたよ、柚香ちゃんの携帯にね」
「はぁ? 何も聞いていないけど」
聖龍はリビングへと向かった。
聖もそれについて行った。
「とってもいい匂いがするね。煮魚かな? この匂い、愛明里が作っていた煮魚と同じ匂いがするけど。お手伝いさんは…」
辺りを見渡した聖龍はちょっと厳しい目を浮かべた。
「いないようだね。どうして、お手伝いさんがいないんだ? 」
聖に向き直った聖龍は、厳しい目の中でどこか怒っているような鋭い目つきをしていた。
そんな聖龍を見ると、聖はグサッと胸を刺される思いを感じた。
「どうして、お手伝いさんがいないのか聞いているのだが? 」
「あ…えっと…。皆さん、ちょっと急用とか実家の方で大変だと言って。今は、休暇を取っているから」
しどろもどろの聖を、聖龍はじっと見た。
まるで嘘をつくなと言わないばかりの目を向けられ、さすがの聖もちょっと申し訳なさそうに目を伏せた。
そんな聖を見て、聖龍はジャケットの内ポケットから何かの用紙を取り出して食卓に広げた。
ん? と、見た聖は驚いて目を見開いた。