結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
復讐3
食卓の上に広げられたのは、離婚用紙だった。
「聖、今すぐこれにサインしてもらえるか? 」
「何? 何の真似なんだ? 」
「柚香ちゃんとすぐに別れて欲しいんだ」
「何を言い出すんだよ! どうして、そんな事…」
聖龍はフイッと悲しげな目を浮かべた。
「聖。私は、女性を大切にできない男は人としてクズだと思っている。私も、愛香里と結婚するまで色々と大変で遠回りしていた。でも、心から愛する人を絶対に悲しませたり粗末に扱う事はしないと決めて結婚した。だから、愛香里の手を荒れさせることなんて断じてあってはならないと思って、お手伝いを雇い家事は全てさせないようにしていた。でも、どうしても子供に手作りを食べさせたいと愛香里が言ったから、最小限の料理作りだけ許していたんだ。外出するときは、必ず送迎するし、いつどこにいても助けに行けるように私が仕事の時は、森沢さんに護衛を頼んでいたんだ」
「そうだったの…」
「森沢さんね、ああ見えても格闘家だから。そのへんのSPより強いんだ。一人で10人はノックアウトしちゃうくらいだからね。私の父も、母の事は命がけで護ってきていた。だから、私は女性を始末に扱う男は絶対に許せないんだ」
「粗末に扱うって、俺はそんな事は…」
バン!
突然、強く食卓を叩いた聖龍に、聖は驚いてビクッとなった。
「…柚香ちゃんの、あんなに悲痛な声を聞いて。私が気づかないと思ったのか? 柚香ちゃんのお父さんである、柳田さんにも聞いている。毎日早朝から深夜まで、家事をさせてこの広い屋敷全部の床磨きまでさせているそうだな」
「そ…それは…柚香が、そう望んでいるから…」
「お前、柚香ちゃんを愛していないのか? 」
「な、なんで? 愛しているから、結婚したんじゃないか! 」
「愛している人を、何故苦しめる? 今日も高熱で、病院へ運ばれるまで。お前は何をしていたんだ? 」
「ちゃんと見ていたよ、一緒に暮らしているんだし」
ギュッと口もとを引き締めた聖龍は「もういい! 」と言わないばかりに、表情をゆがめた。
「一緒に暮らしている。…そうだな、夫婦だから一緒に寝起きもしているのは当然だよな? 」
え?
ドキッとした聖を見て、聖龍はフッとため息をついた。
「…わかった。お前が記入しないなら、弁護士に依頼する。1日も早く離婚してもらわないと、困るからな」
「なんで? 父さんが困る事があるのか? 」
「お前と別れてもらい、柚香ちゃんは私と結婚する! 」
はぁ? 何を言っているんだ? 血迷っているのか?
驚いて言葉を失った聖。
そんな聖をフン! と鼻で笑った聖龍。