結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
駅までの道のりは10分~15分。
駅まで着くと、総合病院行きのバスに乗るためバス停へと歩いて行った聖。
人通りの多い駅前を歩いていると、前方からお腹が大きな妊婦が歩いてきた。
何となく気になりつつも、聖はそのままバス停へ歩いていた。
すると…
「うっ…」
突然うめくような声が聞こえて、聖は立ち止まった。
振り向くと、さっきの妊婦が座り込んでお腹を押さえて苦しんでいた。
「あ、あの…大丈夫ですか? 」
聖が声をかけると、額に汗をにじませた妊婦が振り向いた。
「すみません…救急車を…」
苦しそうにそう言った妊婦の周りには、水のような物が広がっていた。
「ちょっと、待って下さい」
携帯電話を取り出し、聖は救急車を呼んだ。
「まぁ、破水したのかしら? 」
年増の小柄なな女性が妊婦に歩み寄って来た。
「大丈夫? 」
「は…はい…救急車が来ますので…」
「そう、それは良かった」
中年女性は聖を見た。
「ご主人、もうすぐ可愛い赤ちゃんに会えるわね」
え? ご主人? 俺は違うんだけど…。
そう思いながらも聖は、はにかんだ笑みを浮かべていた。
サイレンと共に救急車が到着して、妊婦がストレッチャーに乗せられた。
「す…すみません…。一緒に…来て下さい…」
妊婦が聖に手を伸ばして言った。
「このまま金奈総合病院へ運びます。乗られますか? 」
救急隊員に聞かれた聖は。
「は、はい乗ります」
総合病院に行くならちょうどいいと思った聖は、そのまま一緒に救急車に乗り込んだ。
走り出した救急車の中、妊婦は苦しそうにうめき声をあげていた。
「生まれそうですね、もう頭が見えています」
はぁ? 産まれる?
救急車は路肩に停まった。
妊婦は額に汗をにじませて必死に踏ん張っていた。
まさか…出産に立ち会うのか? 俺…。
驚きつつも、必死に頑張る妊婦を見ていると、なんとなく聖も「頑張れ」と励ましたくなった。
「頑張ってください、もう少しですよ」
救急隊員に励まされながら、妊婦は必死に踏ん張っていた。