結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
「ホンギャー! 」
赤ちゃんの産声が聞こえた!
「おめでとうございます。元気な、男の子ですよ」
産まれたての赤ちゃんが毛布にくるまれ、妊婦に渡された。
「…有難う、産まれて来てくれて…」
赤ちゃんを見て妊婦は嬉しそうに涙ぐんでいた。
産まれたばかりの赤ちゃんは、真っ赤な感じでとても小さい。
そんな赤ちゃんを見ると、聖はキュンと胸が鳴るのを感じだ。
間もなくして救急車は病院へ到着した。
「本当に、有難うございました。助けて頂いて、その上出産にまで立ち会って頂きすみませんでした」
「いいえ、自分もちょうどここに来る途中だったので」
「そうだったのですね」
ストレッチャーで妊婦と赤ちゃんは産婦人科へ運ばれて行った。
聖は柚香の運ばれた病室を確認して、そのまま向かった。
内科の個室に運ばれた柚香。
高熱を出して倒れていた柚香は、かなり栄養も不足していて疲労が溜まっていたようだ。
1週間程入院して下さいと、医師からは言われている。
聖が病室に来ると、聖龍と柚香が楽しそうに話していた。
「ん? 聖、やっときたのか? 大切な奥さんが倒れたというのに、随分とゆっくりなんだね」
ちょっと嫌味な感じで聖龍が言った。
「来る途中で、妊婦さんが産気づいていたんだ。それで、救急車を呼んで一緒にここまで来たんだ」
「妊婦さん? お前が遭遇するなんて、珍しい事もあるものだな」
「ああ、そうだな」
柚香はいつものようにメガネをかけて、髪もボサボサのまま俯いている。
「柚香ちゃん、1週間ほど入院になったから。私が着きそうから、お前はもう帰っていいぞ」
「なんでだよ。そんなの、俺が着きそうに決まってるだろ? 」
「お前は仕事があるだろう? 」
「仕事していても、着き添うことくらいできる。父さんは、帰れよ」
ほう? それは本心か?
聖龍はじっと聖を見ていた。
「後は俺が見てるから、父さんはもう帰れよ」
「柚香ちゃんとせっかく話していたのに、邪魔しないでくれないか? 帰るのは、お前だろう? 」
「はぁ? なんで? 」
「柚香ちゃんが、倒れるまで気づかなかった。そんなお前が着き添っていてもあてにならないからな」
痛い所を着いてきやがる…。
でも、今は俺が柚香の夫なんだから。