結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
「あら、旦那様。おはようございます」
聖龍が起きてきた。
仕事に行く支度をしてやって来た聖龍は、聖はじっと見つめた。
「父さん…おはようございます。…恵子さん、戻って来てくれたのか? 」
「ああ、恵子さんは愛香里のお気に入りの味付けをよく知っている人だ。柚香ちゃんも、恵子さんから教えてもらって愛香里の味付けをマスターしてもらいたいからな」
「そう…か…」
恵子はそのまま朝食を並べ、聖龍にご飯をよそった。
「聖様は、食べられますか? 」
「あ、うん…」
戸惑い気味に聖は食卓の椅子に座った。
特に会話をする事なく、聖龍と聖は朝食を食べ始めた。
朝食を食べ終わると、聖龍は車で送ってもらったが、聖は歩いて出勤すると言って別々で出勤して行った。
車の中で聖龍は、森沢に不在中の事を詳しく聞いていた。
「なるほど。じゃあ、入籍して私がアメリカに行ってすぐに、恵子さんに辞めてもらい。柚香ちゃんが家事を全てやって、早朝から家の床磨きを毎日やらされていたんだね? 」
「はい…。部屋も別々で、柚香様はお手伝いの宿舎で寝起きされていました」
「それは酷い…。妻に対して、家政婦扱いするなんて許せないな」
「そうですが、やはり聖様はずっと勘違いをされたままの様です」
「やれやれ、柚香ちゃんがあんな酷い事をするわけがないじゃないか」
聖龍は小さく呟きながら、遠い目をしていた。
宗田ホールディング。
駅前に自社ビルを構えている大手企業。
世界を股にかけ、現在は医療部門に力を入れているようだ。
今日も忙しい1日が始まる。
聖が出勤してくると、前方から一人の女性が歩いてきた。
派手なウェーブのかかった金髪に、一見ガメラのような顔だちに見えるがメイクを濃くしてごまかしているような、どこから見ても年増のホステスにしか見えない服装で、黒字に赤いバラ模様の長袖ワンピースに赤いハイヒール。
オフィスには相応しくない大きい派手なイヤリングをつけて、ブランド品の派手なバグを手にしている。
「副社長、初めまして」
聖の間近に寄って来た女性はハイヒールを履いていても、ちょっと小柄のようで聖と並ぶとかなり身長差がある。