結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
「私、今日から入社しました金田理子です。社長の秘書として入社しましたが、副社長の秘書も兼ねています。どうぞよろしくお願いします」
愛想笑いを浮かべた理子。
その顔は、小じわが目立ちメイクでごまかしているが、ほうれい線も目じりのシワもかなりある。
「初めまして、こちらこそよろしくお願いします」
答える聖だが、なんとなく理子を見ると嫌な感じを受けた。
見つめてくる視線が腹黒い事を考えて居るような目をしていて、怒りが溜まっているかのように目つきが怖く感じた。
「今日は社長が久しぶりに、出勤してくるとの事で楽しみにしています。でも、私が一番会いたかったのは副社長です」
「え? 俺に? 」
「ええ、副社長とは副社長のお母様を通して親し気にしていたのですから」
そんな記憶はないけど…。
聖は驚いてポカンとなっていた。
「私、あの悲惨な事件を忘れた事はありません。犯人、まだ捕まっていませんよね? 」
「そんな事はもう、ずいぶん昔の事ですから。仕事には関係ありませんので」
聖は先に歩き出した。
「私…副社長のお母様を殺した人を見ました」
そう言われて足を止めた聖。
「警察には話していません。…大切な副社長の事、ずっと見ていますから…」
背中越しに悪寒を感じた聖。
なんだ? この気持ち悪さ。
犯人を見た? じゃあ、この人はあの現場にいたって事か?
「すみません。個人的な話は、仕事に関係ありませんので慎んで頂けますか? 」
「分かりました。…それでしたら私、本日からずっとお傍にいますので」
何を言っているんだ?
訳が分からず、聖はそのまま理子を無視しして歩いて行った。
理子は愛しそうな目をして聖を見つめていた。
「…やっと…結ばれる時が来たのね…」
そう呟いた理子は愛しい目の奥で、何か恐ろしい事を企んでいるような眼差しを浮かべている。