結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
お昼になり。
聖龍は休憩を利用して柚香の様子を見に来た。
聖龍が病院へ来ると、お昼ご飯を食べ終わったところだった。
「随分と顔色が良くなったね。病院の食事は栄養面が考慮されているからね」
「おかげさまで、随分と楽になりました」
「それは良かった。何か足りていないもの、ある? 」
「いいえ、大丈夫です。負ったより回復が早いようで、このままであればあと2日後には退院許可が出せるそうなので」
「そっか」
柚香はチラッと聖龍を見て、床頭台の引き出しから封筒を取り出して渡した。
「ん? これは? 」
「…動き出したようなので、これをお渡ししておきます」
聖龍は封筒の中を見た。
封筒の中には金田理子についての調査書が入っていた。
「彼女の事を調べていたんだね? 」
「はい。何度か苗字が変わっております。彼女は20歳を過ぎてから現在に至るまで、結婚を25回繰り返しております。結婚した夫は全て、死別で。結婚して半年以内に心不全で亡くなっております」
「そんなに結婚を繰り返しているのかい? 」
「はい、全て高齢者を狙っております。そしてかなりの資産家を狙っているので、後妻業ではないかと警察でもマークしています」
「なるほどね。有難う、調べてくれて」
「いいえ…」
封筒を鞄に閉まった聖龍は、じっと柚香を見つめた…。
「聖に、本当のことを話してもいいかな? 」
「それは…まだお待ち頂きたいのですが」
「いや、話す時期が来たと思うんだ」
「知らない方がいい事が、世の中にはありますので」
「知らないから、こんな酷い事が起こるんだ。柚香ちゃんが、うちに来ていた本当の理由をちゃんと話すときが来たと私は思うんだ」
「でも…」
聖龍はそっと、柚香の手に手を重ねた。
「大丈夫。今の聖なら、ちゃんと受け止める事ができる。だって…やっと、私の元に戻て来てくれたんじゃないか…。そうだろう? 柚香…」
名前を呼ばれると、ちょっとドキッとした目を向けた柚香。
「…ごめんね。…私と愛香里が、あんなことを頼まなければ。こんな酷い事に、巻き込まれなくて済んだから…」
「それは…」
「もういいから、これからは柚香の幸せを考える事。いいね? 」
ちょっと複雑そうな顔をして、柚香は俯いていた…。
その後。
病院を後にした聖龍は、そのまま仕事に戻って行った。