結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
エントラスに聖龍が入って来ると。
「あら、お疲れ様です。お父様」
甲高い声で理子が聖龍に歩み寄って来た。
お父様? なんでそんな呼ばれかたをされなくてはならないのだ?
聖龍が怪訝そうな目で見ているにもかかわらず、理子はニコニコと満面の笑みを浮かべて歩み寄って来た。
「お父様。やっと、副社長と結ばれる日が来ました。今日、無事に結婚の承諾を頂けましたの」
「結婚? 」
「はい。ずっと、副社長とは結婚しようって約束していました。でも、なかなかタイミングが合わなくて。でも、今日やっと再会できましたの」
「それはちょっと変ですね」
「変? 」
「聖は、もう結婚していますから」
「え? 」
満面の笑みを浮かべていた理子の表情が急変して、恐ろしく鋭い目つきに変わった。
「聖は既に3ヶ月前に結婚しています。なので、金田さんとの結婚はありえません」
「そんな筈ないわ。だって、私の事を待っていたって言ってくれたもの」
「私にはよく分かりませんが、既に結婚している聖が貴女と結婚する事はないとだけは言い切れます。なので、私の事をお父様とは呼ばないで下さいね」
それだけ言うと聖龍は去って行った。
「結婚している? 誰? 私の彼に手を出すなんて…」
恐ろしい目つきで聖龍の背中を見つめている理子は、嫉妬を超えて殺意をむき出しにしていた。
午後からの仕事中。
理子は聖龍に聖の結婚相手の事を詳しく聞き出そうと、ずっと質問攻めだった。
しかし聖龍は勤務中にプラベートな話は断っていた。
断っても執拗に聞き出そうとする理子に聖龍は。
「これ以上、しつこく聞き出そうとするなら秘書から外れてもらうよ」
と、厳しい目を浮かべて言った。
理子は仕方なく黙って仕事を続けた。
聖龍はそのまま変わらず仕事を続け、定時なると急ぎ足で帰って行った。
モヤモヤしている理子は、聖が帰るのを待ち伏せしていた。
特に声はかけなかったが、聖が帰る姿をずっと着けて行った。
聖はバスに乗り病院へ向かった。
定時にで帰り、病院へやって来た聖は柚香の元へやって来た。
顔色が良くなった柚香を見て、聖はホッとしていた。
柚香から退院が早くなりそうだと聞くと安心した表情を浮かべていた。