結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
春の日差しに包まれて、爽やかなロイヤルイエローのワンピースに白いカーティガンを羽織った愛香里を、柚香は不思議そうな目をして見ていた。
(初めまして。私は…宗田愛香里です)
キョンとした目のまま愛香里を見つめる柚香。
(柚香ちゃん。私と、これからも一緒に遊んでくれる? )
まだ3歳の柚香には愛香里が何を言っているのか分からない顔をしていた。
一緒に来ていたのはお手伝いさんだったが、愛香里が柚香をとても愛しそうに見ている姿に何となく深い愛を感じたようだった。
その後。
お手伝いを通して愛香里は柚香の母・挿花に連絡をして、柚香と会える時間を作ってほしいと頼んだ。
挿花は柚香の父・賢太郎に相談すると言った。
賢太郎は複雑な気持ちだった。
だが、挿花が交換条件を出した。
それは、柚香に会わせる代わりに聖の事を遠くから見守らせてほしいと…。
その条件を呑んで愛香里は柚香に会う時間を許可してもらった。
聖のいない時間を見計らって、柚香を宗田家に呼んだ愛香里。
柚香が宗田家に来ているときは、賢太郎と挿花は遠くから聖の事を見に行っていた。
愛香里は柚香が来るといつもギュッと抱きしめて、とても愛しそうにしていた。
そんな姿を見ていた聖龍。
こうした行き来がされる中。
あの悲惨な事件が起こり、愛香里はこの世を去った。
柚香は愛香里が悲惨な死に方をして、数年の間言葉を失っていた。
そんな柚香を気遣って、賢太郎と挿花は日本ではなく海外へ暫く移住しようと考えアメリカに行った。
海外へ行くと柚香は少しずつ言葉を取り戻してゆき、笑うようになった。
それは…。
偶然にもアメリカにいた聖の妹・香(かおり)に出会ったからだった。
同じ学校で知り合った柚香と香は、まるで姉妹のように似ている所が多く何をやるにも気が合って行動も似ていた。
香と一緒に暮らしていた祖父母の奏弥と凛も「まるで本当の姉妹のようだ」と言っていた。
柚香がアメリカでの暮らしになれて来た頃。
賢太郎と挿花は仕事の都合で、どうしても日本へ帰国しなくてはならなくなった。
しかし柚香は「帰りたくない」と言った。
賢太郎と挿花が困っていると、奏弥と凜が「我が家で預かります」と言い出した。
本当の姉妹のような柚香と香なら、一緒に居ても問題はないと判断して、賢太郎と挿花は柚香を宗田一家に預けて帰国した。