結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
狭いトンネルをゆっくり進んで行った聖は、ふわりと柔らかい世界へとたどり着いた。
「…とっても柔らかい…。柚香…ねぇ、俺の事感じる? 」
尋ねられると柚香は感じた目のまま聖を見つめた。
目と目が合うと、聖は優しく微笑んでくれた。
その微笑みは初めて見せてくれた聖の優しい笑顔で、柚香は目が潤んできた。
「愛しているよ…柚香…」
初めて言われたかもしれない…。
そう思った柚香の目から涙が溢れてきた。
「…もう過去なんて、どうでもいいから…。俺と、この先もずっと一緒に居て下さい…」
これってもしかしてプロポーズのつもり?
しかも、繋がったままで?
ちょっと驚いた柚香だったが、聖の言葉が嬉しくて涙がいっぱいの目で頷くしかできなかった。
その瞬間。
体の奥の方まで伝わって来る「愛している」と言う感情に、柚香はもう何も考える事ができなくなった。
頭の中は真っ白で…ただ、とても暖かいエネルギーを感じているだけだった。
過去なんてどうでもいい…私もそう思う…。
聖に身を委ねて柚香は何も考えられなくなった。
暫くして。
聖と一緒にリビングへ降りて来た柚香は、ちょっと遅めの夕食を一緒に食べた。
「ん? なんだ、2人共今から夕食なのか? 」
先に食べ終えてお風呂を済ませた聖龍がやって来た。
「ちょっと話があったから、遅くなっただけだよ」
そう答えた聖を、聖龍はじっと見つめて来た。
「な、なんだよ…。疑っているの? 」
「いや、何を疑うんだ? 」
「え? いや…別に…」
なんとなくよそよそしい聖を見て、聖龍はニヤッと笑った。
「夫婦で話し合う事はいい事だと思う。ちゃんと、言葉にしないと伝わらない事が沢山だからな」
言いながら柚香を見た聖龍。
「あれ? 柚香ちゃん、なんだかたとっても綺麗だね」
え? と、驚いて聖龍を見た柚香。
そんな柚香に聖龍はそっと微笑んだ。
「元々、柚香ちゃんは綺麗な人だからね。聖は、こんな綺麗な人と結婚できたんだから宇宙一の幸せ者だ」
ちょっと誉めすぎじゃ…。
照れ臭そうに柚香はそっと視線を落とした。
「退院したばかりなんだから、無理しないようにね」
「はい…」
やれやれと、小さく笑って聖龍は去って行った。