結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
「おはようございます、副社長」
男性社員がやって来た。
「おはようございます」
「副社長、今日はなんだかいつもと違いますね」
「え? 」
「とっても幸せそうな顔をしていますね。何か、良い事がありましたか? 」
「い、いや…」
いい事と言われて、聖は昨晩の事を思い出した。
勢いとはいえ、ちょっとかわいそうなやり方だったが柚香と夫婦の営みを交わした。
柚香を抱いて初めてなのも確信した。
社員達が暗くて地味だと言っていた事から、交際した経験がないかと思われるが。
メガネを外した柚香はとても綺麗な顔をしていた。
その素顔を見たことがあるのは、ここでは俺だけなのか?
「そう言えば副社長は、金田さんと親しいのですか? 」
「いや、そんな事はないけど」
「金田さん、ずっと昔から副社長の事を知っていると話していました。随分と小さい頃から知っていると、言っていましたよ」
「知らないけど? 金田さんは、取引先の社長の娘だけど。我が社に出入りはしていなかったし、取引先も今では縁が薄くて我が社に重要な取引先ではなくなっているから」
「そうなんですね」
「秘書として入社してきているけど、社長も秘書から外してしまったようで。あの人が言っている事は、ちんぷんかんぷんで分からない事ばかりだよ」
話しながら到着したエレベーターに乗り込んだ聖。
「副社長。金田さんには気を付けた方がいいです」
「え? 」
「金田さん、目立つ女子社員を目の敵にしています。ちょっと綺麗な感じの女子社員を見ると、すごい目で見ていますし。昨日のお昼なんて、わざと熱いお茶をかけられたって話していました」
「そんな事を? それは問題だな」
「あの服装もどうなのかと思います。仕事中に、タバコを吸って携帯電話ばかり見ている姿も目撃されています」
「わかった。社長に言っておくよ」
曲者だとは思ったが、かなりの奴だ。
もしかして、あの偽の写真を送り付けて来たのもあの女か?
エレベーターが到着して、聖は副社長室へ向かった。