結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
そのまま高校を卒業した聖は大学はアメリカへ渡った。
聖龍を少しでも楽にしてあげたいと思っての事だったが、一人で広い屋敷にいる事は聖龍にとっては寂しい事だと口では言っているようだが、それほどでもなさそうで、もしかしたら新しい恋人でもできたのではないか? と聖は思っていた。
愛香里の事を考えると、聖龍には再婚なんてしてほしくないと聖は思っていたが、だんだんと子育ても手が離れてきた今、そろそろ聖龍には自分の幸せを見てもらいたいと願っていた。
大学を卒業すると、聖は日本に戻ってきて、1年ほど大手コンサルティングに勤務して宗田ホールディングに入社してきた。
しょっぱなから副社長就任はできないと思い、初めは営業部へ所属して外回りを始め取引先の事を学んだ。
入社して10年目になる頃に、ようやく副社長へ就任。
聖龍も楽になると言って喜んでいた。
33歳になった聖に「そろそろ結婚を考えて欲しいんだけど」と聖龍が言っていたが「結婚なんてしないから」と聖は言った。
母を殺されたショックが大きく、人を好きになる事にトラウマを持っている聖。
交際申し込みがあっても全て断ってしまい、誰とも付き合う事もしないまま過ごしていた。
そんな聖に突然、転機が訪れたかのような出会い…いや…因縁の再開が訪れた…。
桜が舞い散る春。
外は暖かくなり上着も軽くなった今日この頃。
宗田ホールディングに新入社員が数名入って来た。
男性社員2人女性社員3名。
新卒と中途採用者と、入社条件はさまざまだった。
しかし聖は、その新入社員の中に見た名前に「やっとその時が訪れた」とニヤリと口元で笑いを浮かべていた。
総務へ配属が決まった新入社員。
名前は柳田柚香(やなぎだ・ゆずか)33歳。
長年法律事務所勤務を経て、宗田ホールディングへ転職してきたようだ。
柚香。
そう…聖がずっと復讐する事を胸に誓っていた仇である、あの柚香だったのだ。
小学生の頃、ほんの少ししか見ていない柚香の顔だが聖はハッキリ覚えていた。
だがもう既に24年経過して、大人になっている事から顔立ちも随分と変わているだろうとは想定していたが、聖は柚香の両親の写真を手に入れていた。
2人の顔を参照にしていれば分かる筈だと…。