結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …


 午後から柚香は秋田法律事務所で入社手続きを済ませて、少しだけ聖一郎の仕事を手伝っていた。


 気づけばもう夕刻時になっていた。


 一息ついて柚香は帰宅する為にバス停へ歩いていた。

 すると。
 前方から聖が歩いてきた。
 その隣には、あの理子がいた。
 
 なんだか無理やり聖に付きまとっているようで、聖は怪訝そうな顔をしている。

 近づいてくる聖に気づいて、柚香は物陰に隠れた。

 なんだか会ってはいけないと思ったのだ。

 柚香に気が付かないまま聖は通り過ぎて行った。


 
 暫くして物陰から出てきた柚香は、近くのオフィスビルへ入って行った。

 そのままお手洗いに言った柚香は、綺麗にまとめていた髪をほどいてボサボサの髪にしてしまい、いつものようにメガネをかけた。

 綺麗なまま帰宅すればいいのに、何故わざわざボサボサの髪でメガネをかけてしまうのだろうか?


 いつものように地味な感じでオフィスビルから出て来た柚香。


 すっかり外は夕日が綺麗に輝く時間になっていた。

 
 そのまま歩いてバス停へ向かおうとした柚香だが。
 見慣れた姿が立っていて驚いて足を止めた。

「やぁ…」
 見慣れた姿は聖龍だった。

 柚香はこくりと頭を下げた。

「仕事見つかった? 」
「はい…」
「そう、よかった。わざわざ探さなくても、私の秘書になってくっればい良かったのに」
「いえ…それは…」
 
 何となく言い淀んでいる柚香に、聖龍はそっと歩み寄って来た。
「ねぇ、どうして? 綺麗にまとめていた髪をほどいてしまったんだ? 」
 柚香の髪に触れながら、聖龍は少し悲しげな目を浮かべた。 

 まさか、見ていたの? 私の行動…。
 驚いた柚香はチラッと、聖龍を見た。

「メガネ、外していた方が可愛いのに。わざと、さえない姿にしているの? 」
「…そうゆう事では…」
「綺麗にしていると、愛香里とよく似ているね」
 
 ぎゅと口元を引き締めて、柚香は俯いた。

「ごめん、ごめん。意地悪したんじゃないよ、嬉しくてね。目元は、私と似ているんだね」
「…やめて下さい…」
「聖は、挿花さんにそっくりになって来たよ。綺麗な顔立ちしていたからね」
「…その話は今はしないで下さい…」

 柚香は先に歩き出した。

「まって」

 ギュッと手を握られてひきとめられた柚香は、複雑そうな表情を浮かべた。

「せっかくだから、どっかでご飯でも食べよう」
「いえ…」
「いいじゃないか。たまには聖も、柚香ちゃんがいない家に帰るのもいいだろう」
「そんな…」
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