結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
「あれ? 父さん? 」
声がして振り向くと、聖がいた。
「なんだ、柚香も一緒だったんだ」
聖龍はなんとなく気まずそうに、柚香の手を離した。
「実はさっきまで、金田さんにつきまとわれてたんだ。交番に行ってなんとかしてもらったよ」
「そうだったのか」
「家まで来るとか言われて、ちょっと怖くてね」
言いながら聖は柚香の傍へ歩み寄って来た。
「仕事探しに来ていたのか? 」
「はい…」
「そっか」
そっと時計台に目をやった聖。
「今日はどこかで食べて帰ろう。外食、一緒に行った事なかったよね? 結婚してから」
「いえ…私は…」
「就職活動も疲れるから、気分転換も必要だ。父さんもいるんだし、たまにはお手伝いさんだって楽をさせてあげればいい」
ギュッと、柚香の手を握って来た聖。
その手からは優しい温もりが伝わってきて、柚香はドキッと鼓動が高鳴った。
「そうだ、シティーホテルの1階のレストランに行こう。おすすめのディナーがあるから」
柚香の返事を聞かないまま、聖はそのまま歩き出した。
手を引かれながら、柚香はちょと複雑そうな顔をしてついて行った。
その後ろから、聖龍も、やれやれと言う顔をしながらついて行った。
その後。
聖は柚香と聖龍を連れて駅前にあるシティーホテルのレストランで、ディナーを楽しむ事にした。
聖に付きまとっていた理子は警察に捕まったが、聖とは恋愛関係だと主張して、もう20年以上も前からの付き合いだと言い通していた。
埒が明かず、とりあえず理子の身内に迎えに来てもらい家に帰された。