結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
理子の父親は金田郷司(かねだ・ごうじ)65歳。
宗田ホールディングの取引先で、金田工務店を経営していた。
昔は羽振りが良く年収1000万声で、宗田ホールディングとも有望な取引をしていたが、理子が高校生になる頃から景気が悪くなり宗田ホールディングトン取引も曖昧になっていた。
次第に資金繰りが悪くなった事から、下請けからお金をだまし取るような真似をするようになり協力者がいなくなり。
ある日、宗田ホールディングにありもしない事を吹っかけてきて多額な損害賠償を要求してきた事もあったが、嘘がすぐにばれてしまい取引中止の話も出たが、当時、宗田ホールディングの社長だった奏弥が中止までは踏みとどまり現在も細々と取引をしていた。
しかし最近は景気が悪く、取引したくても会社の体力がなく動けない状態。
それ故に、理子を宗田ホールディングに入社させ副社長の聖に近づけようとしているようだが、失敗に終わっている。
理子とは似ていない親子で、太めの体形で童顔な顔つきでいかつい目をしている。
妻は10年前に他界していて、現在はキャバクラの若い女性と遊んでいるようだ。
「まったく、お前は何をしているんだ。警察に捕まるようでは、到底結婚なんかしてもらえないだろう」
帰りの車の中で郷司が言った。
「大丈夫よ。だって、もう副社長とは一緒に暮らす事になっているから」
「え? 」
「妻とは別れるって言ってくれたの。離婚届も、私にもらってきてって言っているから」
「そう…なのか? 」
「ええ、今日のはちょっとした誤解だから心配しないで」
郷司はちょっと違和感を感じながらも、理子の話を聞いていた。
理子の家は駅から車で20分ほど離れた場所にある住宅地。
住宅地でも、離れた静かな場所に大きめの屋敷のような一軒家を構えている。
いつも忙しくしている事から、お手伝いを雇い家の中の事を全てやってもらっている。
家に戻ると理子は自分の部屋に行った。
広い洋室に、大きめのベッドと机と椅子。
壁には聖の写真が沢山貼られているが、どれもカメラ目線ではなく隠し撮りをしている写真のようだ。
鞄を乱暴に放り投げると、理子は服を脱ぎ始めた。
下着姿になると、壁に貼ってある聖の写真に歩み寄りほおずりし始めた。
「もうすぐよ…私達、一緒に暮らせるようになるわ。…あの邪魔な女は、永久にいなくなるから大丈夫…」
ニヤッと笑いを浮かべた理子は、完全に狂っているとしか言えない表情をしていた。
数日後。
柚香は本格的に聖一郎の事務所で働き始め、事務員として仕事をしている。
初めの受付を担当して、依頼内容を聞き取りして行く役目を柚香がやる事になった。
聖一郎は忙しく、殆ど事務所にはいない。
だが、柚香が優秀で依頼に来た人も受け付けの段階で安心して依頼できると言っている。
仕事の時はかっちりとスーツを着て、紙も綺麗にまとめてメガネを外している柚香。
しかし仕事が終わると、髪をボサボサにして大きな眼鏡をかけて帰宅する。
どうやら聖の前では、さえない自分を見せているようだ。