結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
入社してきた柳田柚香の顔を見て、父親譲りのちょっと彫が深そうな目元に母親譲りの優しそうな口元がそっくりで間違いないと確信した。
最終学歴は国立大学法学部になっていたが、その学校は有名私立学園で幼稚園から入学すると大学までとんとん拍子で進学できると言われている学校だった。
「ようやく会えたなぁ…」
聖の中で柚香への憎しみがふつふつと込みあがって来ていた。…。
新入社員の中でも柚香は地味な感じで、あまり喋ろうとはしないタイプで、お昼休みも一人で過ごしていた。
左肩が上げずらいのか、いつも庇っているような感じがする。
女性にしては背丈が高くスラっとしているが、何となく顔色が悪いような感じも受ける。
いつも一人で過ごしている柚香に、聖は少しずつ距離を近くしていった。
さりげなく珈琲を買ってあげたり、偶然を装って帰りに一緒に帰ってみて、遅くなった日には夕飯をご馳走したりと。
優しく親切で、女性想いの紳士を演じながら柚香の心を自分に向けさせていった。
距離を近づけて行き始めて3ヶ月過ぎた頃。
聖は柚香に交際を申し込んだ。
ちょっと迷った柚香だったが、快く交際を受けてくれた。
よし、この調子だ。
このまま結婚にこぎつけてゆけば…。
俺の復讐が始まるんだ。
そう腹の内では考えながらも、表面上では優しい笑顔で接していた聖。
交際が進んで半年経過した時。
柚香にプロポーズした聖。
「こんな私と結婚ですか? …」
そう驚く柚香に。
「何を言っているの? 柚香さんは、俺にとって最高の女性だよ」
と言った。
迷った柚香だったが、聖からのプロポーズを受けてくれた。
ヨシ!
上手くいったぞ!
腹の中で大笑いしていた聖。
結婚式はもう30歳を過ぎているから、しなくていいと聖が言った。
入籍だけすぐに済ませて、宗田家で暮らす事になった聖と柚香。
2人が宗田家で暮らすようになると、聖龍はアメリカ支社に呼ばれて長期出張に行ってしまい、同居と言うより新婚生活の始まりだった。
だが…。
これは聖にとってはとても好都合だった。
入籍を済ませて一緒に暮らし始めた聖と柚香。
初日はお手伝いがいたが、次の日になると、突然お手伝いは全員辞めさせられてしまった。