結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
復讐11
駅前まで来ると、聖も柚香も別々の方向へ歩く事になった。
「ねぇ、柚香。やっぱり、我が社に戻って来てよ」
「それはできません。仕事まで一緒では…」
「ずっと一緒にいたいから、仕事でも一緒にいたって俺は平気だよ」
「でも…」
「元々一緒の職場だったんだから、特に問題はないと思う。今度は柚香には…うちの顧問弁護士として、働いてほしいんだ」
な、なんで? 私、弁護士である事隠しているけど…。
驚いたまま黙っている柚香を、聖はそっと抱きしめた。
「もういいだろ? 本当の事を、話してくれても。柚香は、普通の人とはちょっと違うって思っていたから。うちの顧問弁護士が、もう年だからそろそろ引退したいって言って来て。弁護士会の一覧を見る事があってね。その時に、偶然見たんだ。柚香の名前を」
ああ、弁護士会の情報ね…。
そこまでは消せなかったし、仕方ないか。
「柚香は、俺とずっと一緒にいる事は嫌なのか? 」
「いえ、嫌ではありません…」
「じゃあ、いいだろう? 2人の時間、楽しめるし」
「仕事なのに…」
「一緒にいられることが、幸せなんだから」
幸せ…。
そこまで言われると、悪い気はしない…。
「少し、考えさせて下さい。今の職場を直ぐに辞める事はできませんから」
「ああ、それまではこうして毎日一緒に出勤できる事で満足しておくよ」
こんな展開になるなんて…。
憎しみしかない目で私を見ていたのに…こんなに穏やかな目を向けてくれるなんて…。
名残おしそうに柚香と離れた聖は、そのままオフィスビルへ向かって歩いて行った。
歩いてきた柚香はふと、シティーホテルの前で足を止めた。
(シティーホテルのスイートルームに来て。そこに聖がいる。貴女は聖と体の関係を持つ事。そうすれば、聖は永遠に貴女のモノになるから)
柚香は理子にそう指示した。
明後日と指示したが今夜じゃなくては嫌だと理子が言い出し、今夜に決めた。
理子が根回しして、宗田ホールディングの女子社員にお金を払い聖をシティーホテルのスイートルームに呼び出す計画を持ち掛けている。
「…これでいい。…これ以上、一緒にいる事はできないから…」
歩き出した柚香。