結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
その日の午後。
柚香は役所で離婚届をもらって来た。
役所から出て歩いてきた柚香の傍に、ゆっくりと誰かが歩み寄って来た。
ん?? と、柚香は目を凝らすと。
歩み寄って来たのは聖龍だった。
「やぁ、どうしたんだい? こんな所で」
「いえ…」
浮かない顔の柚香を見ると、聖龍は何かピンと感じたようだ。
「柚香。そろそろ、聖に本当のことを話すことを決めたよ」
「え? 」
「いつまでも隠し通せる事じゃない。それに、聖も気づき始めているようなんだ」
気づいている? そんな筈ないけど…。
でも、本当の事を言う事は、離れる理由にもなるかもしれない。
「わかりました。その辺りはお任せします」
そう。
この真実を告げる事も離れる理由になるだろうから。
そのまま駅前まで歩いてきた柚香は、理子に計画を実行する為にメール送った。
すると秒速で返信が来た。
(今夜、シティーホテルのスイートルームね。わかったわ)
返信からも理子のテンションは伝わって来る。
これでいい。
そう思って歩き出した柚香。
歩き出した柚香が信号待ちの為立ち止まると、信号の向こうに理子の姿を見た。
一段と若作りをした格好で、何を思ってかフリフリのワンピースを着て長い髪を巻いている姿が、フランス人形をイメージしているような感じに見えるがあまりにも似合わない格好に傍にいる人がヒソヒソと理子を見て笑っている。
そんな様子にも気が付かない理子は上機嫌な顔で、誰かと腕を組んでいた。
信号が変わり歩き出すと、理子の隣にいる男性の姿が見えてきた。
理子の隣にいたのは理子の父親・郷司だった。
まるで恋人のように腕を組んで歩いている理子と郷司。
親子なのに奇妙な雰囲気に、柚香は違和感を感じた。