結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
復讐2...
「今日からお前が家の中の事をやれ。家の床磨きは、早朝からやるんだ! 俺が起きてくる前に全て済ませておけ! 朝食も、俺が起きてくる前に作っておくこと。いいな! 」
優しかった口調が急変して、荒い口調に変わり、言葉も暴言に近い状態で言い放つ聖に、柚香は黙って返事をしただけだった。
結婚と同時に仕事を辞めた柚香だったが、この広い屋敷を毎日一人で切り盛りするのはちょと厳しそうに見える。
さっそく朝食作りから始まった柚香。
短時間で作り上げた朝食だが、ご飯と味噌汁と出汁巻き卵に佃煮、そして焼きのりとちょとした煮物が用意された。
見ているだけでも美味しそうな朝食だが、聖は不機嫌そうな顔を浮かべた。
「なんだ? この味は」
味噌汁を一口飲んだ聖が、ギロっと柚香を睨んで行った。
「お前、日本人のくせに味噌汁もろくに作れないのか? こんなもの、不味くて食べられたものじゃない! 」
言いながらシンクにお椀ごとひっくり返した聖は、そのまま怒ってリビングを出て行った。
何も言わすに残された朝食をかたずけ始めた柚香。
暫くして出勤準備をした聖が玄関にやって来た。
見送りをする為に出て来た柚香を、またギロっと睨んだ聖。
「お前、明日もあんな不味いの作ったらただじゃ済まさないからな! 」
そう言い放ち、怒った態度のまま出勤して行った聖。
柚香は何も言わないまま「行ってらっしゃいませ」と、頭を下げた。
そのまま運転手に車に乗せてもらい、聖は仕事に向かった。
まだまだこれは序の口だ。
お前の地獄はこれからだからな…。
腹の中でそう呟いた聖。
ここから聖の復讐がスタートしたのだった。
真冬の寒い中。
こんな日に早起きして床を雑巾がけするのは、かなり寒さがこたえて手も水の冷たさに凍り付きそうになるくらいだが、聖が床を拭く時は水しか使うな! と厳しく言った事から、それを柚香は守っている。
早朝4時には起きて床の水拭きから始めて、朝食の準備をしている柚香。
包丁を握っている手は、どこか震えているようにも見えるが懸命に朝食を作っている姿はどこか痛々しく見える。
聖が起きてくる7時には朝食が出来上がって、食卓の上に準備されている。
「おはようございます」
リビングにやって来た聖に挨拶をした柚香だが、聖から返事は返ってくることはない。
挨拶くらいはしてほしいけど…。
そう思う柚香だが、口には出せないまま…いや、出してはいけないと思っている。