結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
聖龍が階段を降りてくると。
「やっぱり来てくれたのね」
甲高い声が響いて来て聖龍は立ち止まり、じっとその者を見た。
「私達って運命の糸で結ばれているのよ、あの日から」
フフっと怪しく笑ったのは、指名手配中の理子だった。
派手なスリップドレスを着て、胸の谷間を強調するかのような格好で、相変わらずの派手なメイク姿。
聖龍はだまったまま理子を見ていた。
理子は聖龍を見るとニコっと笑った。
「ねぇ、これ覚えている? 」
笑いながら理子が見せたのは、赤い毛糸のリボン。
手作りのようだが、なんだか赤黒くなっていて古い感じがする。
「やはり、それは君が持っていたんだね」
階段を降りて理子に歩み寄って行った聖龍は、どこか怒りを抑えた様な目をしていた。
「だって、これが唯一あなたと私を結ぶ物なんだもの。ずっと、大切に持っていたわ」
「そう…」
「ねぇ、じゃまなあいつを殺した犯人って。あの柚香って女だって、聖さんは思い込んでいるのでしょう? 」
「そうだね…」
フフっと笑った理子は聖龍に歩み寄って来た。
「そっか。じゃあ柚香と結婚したのは復讐の為? 」
「…そうだろうね…」
「ふーん。でも、あの女って私に聖さんを誘惑するように言って来たのよ。まぁ、私には好都合だったから。そのまま関係を持てば、私が聖さんの子供を産んで。貴方の子供として、育てる事ができるって思ったんだけど。あの女、私をはめたのよ。おかげで、警察に追われる身になってしまったわ」
「…愛香里を殺しておいて、私と結婚できるって思っているのか? 」
「殺すだなんて、そんな言いかたしないでよ。元々邪魔だったんだからしかたないでしょう? 」
「仕方ない…か? 」
ギュッと拳を握りしめた聖龍。
「あの日は、愛香里と私の結婚記念日だった。その日に…実の娘と会いたいと愛香里が言ったから、柚香はいたんだ」
「え? 何を言っているの? 実の娘って、香里さんはずっとアメリカにいるじゃない」
「柚香は、私の実の娘だ! 」
わなわなと込みあがる怒りを抑えながら、聖龍は理子を見た。