結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …

 聖一郎からの電話は、柚香の行くへが見つかったが離婚の意志が変わらない。
 このまま離婚届けを出してもらえないなら、調停に持ち込むと言う連絡だった。

「離婚の理由はなんですか? 俺が、柚香に酷い仕打ちをしていた事ですか? 」
(いや違う。柚香が自分が悪いと言っている)
「そんな…。何を悪い事をしたと言うのですか? 」
(君をハメようとした事だ。金田理子をたきつけて、君と関係を持たせよとした。不貞行為を、でっちあげようとしたと言っている)
「それなら未遂で終わりました。何もなかった事です」
(それでも辛いそうだ。君を騙そうとしていた事が)
「柚香と話をさせて下さい。こんな一方的では、納得できません。柚香に、そんな事をさせてしまたのは俺にも責任があります。柚香だけが悪い事じゃありませんから」

 調停にかけるとまで言っても引き下がらない聖に、聖一郎も電話の向こうで辛そうな顔をしていた。

(とりあえず柚香の離婚の意志は変わらないようだ。今の君の気持ちは、伝えてみる)
「話す事はできませんか? 俺…本当の気持ちを、柚香にまだ伝えていません。…だから…」
(君の気持ちはよく分かった。伝えておく。…少し、時間が欲しい)
「はい、わかりました」

 電話を切った聖は小さくため息をついた。


 

 その日の夜。

 聖は一人港までやって来た。
 ここは、聖が思いつめる事があると一人で来る場所だった。

 愛香里が亡くなり柚香を恨む事で生きる糧にしていたが、それでも時々悲しみが込みあがって来てあふれ出す感情を抑える事ができない時もあり、港に来て海を見ながら一人で泣いていた事もあった。

 久しぶりにやってきた港は賑わっていた。
 フェリーが到着して、下りて来た乗船客などがいて、静かな場所ではなかったが今の聖にはそれがちょうど良かった。


 フェリーを見ながら聖は何度か携帯電話を取り出し、発信しようか迷っていた。
 聖一郎が間に入り連絡があった事から、柚香に直接連絡はしない方がいいと分かっているがどうしても話したくて…。
 
 何度か迷った聖だったが、思い切って発信ボタンを押してみた

 コールが鳴り始めて、どうせ出てもらえないだろうと思っていた聖だったが。

 何か遠くから音が聞こえてくるのが耳に入った。

 コール音と同じように着信音らしき音が聞こえる…。

 聖は携帯電話を耳にしながらふいに振り向いた。
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