結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
不機嫌な顔のまま朝食を食べている聖。
ご飯と味噌汁を食べると、他の物は手荒にシンクに投げ捨てた。
「全くいつまでたっても、不味いものばかりだ。お前は一体今まで何を食べて生きていたんだ! 」
怒鳴りつけて来た聖に、柚香は深く頭を下げた。
「申し訳ございません」
小さな声で謝る柚香を、見下した目で睨みつけ、聖はそのまま去って行った。
こんな生活が続いてもう3ヶ月。
朝食は何を作っても不味いと言って食べてもらえない。
夕食も大声で文句ばかり言って、食べるには食べるが、食器をシンクに投げつけて置いたり、時には皿を床に投げつけ割ってしまう事もタダある。
それでも柚香は何も文句を言わず「申し訳ございません」と謝るばかり。
一緒に食事はしないと言われて、柚香は聖が食べ終わった後に残り物を少しだけ食べているようだ。
寝る部屋も別々にされ、柚香はお手伝いが使っていた部屋で寝起きしている。
当然だが、夫婦の営みは一切ない。
結婚して新婚だと言うのに、一緒に出掛ける事もないままである。
休みの日になると聖は出かけて夜遅くまで帰らない。
夕食は外で済ませて来ていて、柚香が作っていても食べないまま置いてあることが多い。
残り物を翌朝出しては怒鳴られることが解っているため、柚香がこっそり食べている事もある。
洗濯もシャツはアイロンがけしておけ! と言われている事から、しっかりとアイロンがけしている柚香。
ピピッ。
聖が出勤して行った後、柚香の携帯電話が鳴った。
「はい、もしもし…」
(柚香ちゃん? 元気にしているかい? )
聖龍からだった。
「ご無沙汰しております、元気にやっていますのでご安心下さい」
(そうか。…聖は、相変わらずかい? )
「あ…いえ、とても優しくて毎日安心していますよ」
そう答えた柚香の目が潤んでいた。
(…柚香ちゃん。…私に隠し事なんてしなくていいんだから。本当の事を話してくれて構わないんだよ。聖がいない時間を見計らって、わざと電話しているのだから)
「いえ、そんな事はありません」
(お手伝いさん、全員辞めさせられたって聞いているよ)
「え? 」
(運転手の森沢とは、よく連絡を取っているんだ。その時、家の様子も聞いているよ)
あ…森沢さんがいたか。
でも…
「森沢さんが気を使ってくれているのですね? でも、本当に大丈夫ですから」
(近いうちに帰国する予定だよ)
「え? もうお帰りになるのですか? 」
(ああ、こっちには聖の妹もいるから。私がやる事はもう終わったんだ)
「そうなのですね。…判りました…」
(柚香ちゃん、安心していいよ。私は、真実をちゃんと知っているから。…柚香ちゃん、愛香里と随分親しかったんだよね? )
え? 何でそんな事を…。