結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
「一人で背負うつもり? 俺がいるのに」
「…だって…別れるべきでしょう? こんな私と一緒にいても、貴方がダメになるだけですから」
「俺、ダメになったりしてないけど。むしろ逆で、なんだかよくなってゆくばかりだと思っているけど。今の人だって、偶然でも俺が助けられたのは。柚香が病院に運ばれたときだったし、今日でもここで会えるなんて思ってなかったし。ましてや、あの助けた人が大手医療企業の社長さんの奥さんだなんて、夢にも思わなかった。柚香に出会って、俺は良いことしかないって思っているよ。ご飯だって…母さんと同じ味付けにしてくれていたじゃないか」
知っていたの? いつも、まずいって捨てていたのに?
複雑そうな表情を浮かべた柚香…。
「古いノートを見つけたよ。母さんが、昔、俺が好きな味付けにするためにずっとノートに書いていてレシピにしてくれていたノートだった。父さんが、母さんと同じ味付けだって言ってて。俺も食べてみたら、本当にそうだったから…。ごめん…」
謝られると辛い…。
私だって、大きな勘違いをしてあんなことを企てたのだから…。
「…ごめんなさい…。子供は、もういないの…」
「え? 」
「…中絶したから…」
「はぁ? 」
そっと、柚香は聖の手を振り払った。
「貴方との子供は…中絶しました…」
嘘だろう?
信じられない目をしている聖に、柚香は冷たい眼差しを向けた。
「…子供がいると、離婚はできませんから中絶しました。…なので、一日も早く離婚に応じて下さい」
信じられない目をして、茫然としている聖をそのまま残して柚香は去って行った。
「嘘だろう? …そんな簡単に…俺の命だって半分は言っているのに…」
信じられない気持ちで聖はしばらくその場に佇んでいた。