結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
それから2週間後。
聖はちょっとだけ気持ちの整理ができた。
子供も中絶してしまったというのが本当なら、これ以上、柚香を引き留めておくのはお互いのためにならないと思い始めた聖は離婚に応じる気持ちになっていた。
だが、聖が柚香に酷い仕打ちをしていた結果で離婚になったのは確かだと判断され、聖から柚香に慰謝料を支払うことを決めた。
仕事が終わってから誠一郎の事務所へ行って、離婚届にサインをして柚香に支払う慰謝料を渡すことを決めた聖。
そんな時。
以前、港で会った紳士が聖を訪ねてきた。
あの紳士は如月拓斗(きさらぎ・たくと)と言って、如月財閥の投手で父は銀行頭取だったが兄が後を継ぎ、分家として如月財閥の投手になり、現在は医療機器や薬に関する研究で企業をはじめ年商100億以上の大手にまで大きくなったようだ。
そんな拓斗が聖を訪ねてきたのは、仕事上の取引をしてほしいとの事で話しに来たのだ。
宗田ホールディングはまだ小さいながらも、医療方面に進出し始めていた。
如月財閥と取引をすることで、宗田ホールディングも財閥の仲間入りを果たせる可能性もできたのだ。
「とても光栄なお話です。ぜひ、前向きに検討させて頂きます」
聖がそう答えると拓斗は満面の笑みで喜んでいた。
「嬉しいです。これからも、どうかよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ」
「奥様はお元気ですか? 」
「は、はい…」
ちょっとドキッとした聖。
もう離婚を決めたとは、まだ言えない…。
「もうお腹も目立つようになりましたね」
「え? 」
「先日、妻が検診に行ったときに奥様とお会いしましてね。2か月前に会ったときは、確かまだ3ヶ月に入ったばかりとのことで。先日はもう5ヶ月を過ぎたと言われておりました。お腹も目立つようになって、悪阻もやっと治まってきたと仰っておりました」
貴方の子供は中絶しました…。
柚香はそう言った。
まさか…離婚を決めさせるために嘘をついたのか?
ちょっと困惑している聖だが、確かにあの時の柚香はどこか気分が悪そうな顔をしていたのは違いなかった。
「お子さんは双子のお子さんだと聞きました。人よりちょっと、お腹が目立ってしまって、大変そうですが。一度に、2人も来てくれるとは。すごいですね。それに、奥様は河野原財閥のお嬢様なのですね」
「は…はい…」
「河野原財閥の党首、貫太郎さんは私の兄と兄弟なのです。奥様の挿花さんが一人娘だったので養子に行かれたのですが。突然亡くなられて、子供も養子に出したと聞いていましたが。こんな形で再会するとは、びっくりしました」
柚香の本当の両親は河野原さん…。
でも、その人は俺の実の両親…。
その両親の血縁者がこの人だなんて…。