結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
その頃…。
聖は河野原家のお墓へ来ていた。
金奈市の山の方にある墓地に、河野原家の大きなお墓がある。
この場所は聖一郎から教えてもらった。
挿花が好きだったと教えてもらったカスミソウをお墓に供えて、聖はそっと手を合わせた。
「…お父さん…お母さん…」
そっと目を開けた聖はお墓を見上げた。
「俺が渡した飲み物で…本当のごめんなさい…。でも、俺の事をこの世に誕生させてくれて有難うございます。…2人が大切に育ててくれた柚香の事を、一生かけて幸せにします…」
一息ついて、そっと微笑んだ聖。
「あれ? 来ていたのか? 聖」
声がして振り向くと、そこには聖一郎がいた。
「こんにちは。やっと落ち着いたので、ご挨拶に来ました」
「そっか」
誠一郎もお墓に手を合わせた。
「…母さんが言っていたけど。お前が生まれる前から、男の子だったら「聖」って名前を付けるつもりだったらしいよ」
「え? 本当? 」
「ああ、でも呼び方は「ひじり」とするつもりだったみたいだ。女の子が欲しかったのは事実だけど、ずっとお前が生まれてくるのを、ずっと楽しみにしていたんだ。俺はまだ小さくて、ただ「赤ちゃんが生まれてくるんだよ」って母さんが言っていたのを覚えているだけだけど。男の子って聞いていたような気がしたけど、女の子が来てびっくりした」
「そうだったんだ…」
「まぁ、でも結局はお前も柚香も元のさやに納まってよかった。出会いは残酷だったけど、もう過去を見ないでこれからを見てほしい」
「はい、そうします」
2人で並んでいると、聖一郎と聖はよく似ている。
タイプは違うようだが、やはり兄弟なのだとよく判る。
1年後。
宗田ホールディングは新事業が軌道に乗り、ますます忙しくなり、現在は聖が社長に就任して聖龍は会長になり主に相談役に徹している。
必要以外は出勤しておらず、今は生まれてきた孫に夢中である。
あれから聖と柚香の間に授かった双子の子供が生まれた。
男の子と女の子の双子で、男の子がお兄ちゃん女の子は妹。
男の子には優(すぐる) 女の子には花恋(かれん)と名付けた。
優は柚香に似ていて、花恋は聖に似ている。
双子は泣くのも同時で、一度にバタバタとなってしまう事ばかりだが、いつも傍に聖龍か聖がいてくれることで助かっている。