結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
冬の時期は日が沈むのも早く、17時を過ぎると外はもう真っ暗だ。
運転手が迎えに行き、聖が家に帰って来た。
今日はいつもより早く帰って来た聖。
夕食の支度は当然できていないのは分かっているが、とりあえず何か怒鳴りつける理由が欲しくてわざと早く帰って来たようだ。
怒りを全面に現した顔で玄関から入って来た聖。
しかし、何か家の中が妙に静かなような気がした。
リビングへ向かうと、食卓の上には夕食の準備が既に整っていた。
今夜は煮魚が作られている。
ラップをかけてあり、食卓の上にはメモ書きが置いてあった。
(申し訳ございません。温めて召し上がって下さい)
そのメモ書きを見た聖は怒りが込みあがり、メモを破り捨てた!
「温めて食べろだと? ふざけるな! おい、柚香! どこにいるんだ! 」
叫びながら柚香を探し出した聖。
広い屋敷の中を探しても柚香の姿は見当たらず。
柚香が寝起きしているお手伝いの使う部屋に行ってみたが、そこにも柚香はいなかった。
「あいつ…まさか。逃げ出したのか? 」
携帯電話を取り出して電話をかけようとした聖の元へ、運転手の森沢がやって来た。
「聖様。申し訳ございませんが、柚香様はここにはいらっしゃいません」
「はぁ? どうゆうことだ? 」
「柚香様は、現在病院へ運ばれております」
「病院? どうゆう事だ? 」
森沢は少し厳しい目を向けて聖を見た。
「真冬の寒い中。冷たい水で雑巾がけをして、洗濯をして…私が戻って来た時は、庭で倒れておられました。呼びかけても返事がありませんでしたので、そのまま病院へお連れしました」
「倒れていた? なまけていただけじゃないのか? 」
「40度の高熱がございました」
「はぁ? 」
さすがの聖も顔色が変わった。
「昨日も、随分とお顔の色が悪い様子でした。最近、食欲もないご様子で…。こちらに来られた時より、随分とお痩せになられている様子を受けました」
「そう…なのか? 」
「…あの…。そろそろ、柚香様をもっと大切にされることをお考え下さい」
「なに? 」
森沢は厳しい目から意を決したような目に変わった。
「もしこれ以上、聖様が柚香様を大切にされないのでしたら。私は…ここを去ります」
「はぁ? 辞めると言うのか? 」
「はい。…これ以上、私は聖様に間違って欲しくないと願っております」
それだけ言うと、一礼して森沢は去って行った。
「あ…申し遅れました。…柚香様の搬送された病院は、金奈総合病院です」
背を向けたまま、チラッと顔だけ振り向いて森沢は言った。
去り行く森沢を見ながら、聖は何故か罪悪感が込みあがってくるのを感じた。