クールな救急医は囲い娶ったかりそめ妻に滾る溺愛を刻む【ドクター兄弟シリーズ】
彼はあっという間に男の子に点滴をつないだ。


「野上にコールして」


走りだした車内で救急隊員に指示を出した先生は、すぐさま電話を代わって話し始めた。


「堀田です。これから交通事故のふたりを搬送する。ドクター誰がいる?」


彼は話しながら男の子の頭の傷を診察している。


「それじゃ、天沢(あまさわ)に代わって」


それから彼は、病院のドクターに私たちの症状を話し始めた。

専門用語が飛び交うその内容は私にはよくわからなかったものの、短時間でそれほど患者についての情報をつかんだのかと驚くほど細かい報告だった。


「あと三分で着く」


病院が近くてよかった。

痛みに耐えて歯を食いしばりながら、そんなことを考える。

切れ長の目を持つ堀田先生はまだ若く、三十歳前後に見えるが、落ち着いた様子からこの人に任せれば大丈夫だという安心感がある。

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