浮気ダメゼッタイ!悪役令嬢ですが一途な愛を求めます!
5 重すぎても一途な愛は大歓迎なので
立太子の儀式を行う日になった。
前日までしとしとと雨が降っていたが、今日は雲一つない青空。新しき王太子の門出を、天も祝福してくださっているようだ。
第二王子テオドールは国王陛下に跪き、冠を頭上に戴く。
赤いマントを羽織ったテオドールは、鍛えているせいか体つきもがっしりし始めていて、とても元病弱には見えない。それどころか、神々しく威厳もあり、王太子たる空気をすでに放っている。
(さっきまであんなに駄々をこねていらしたのに、流石ね……)
セリーヌは堂々としたテオドールの佇まいを側で見守りながら、つい先ほどまでの彼を思い出していた。
*
「あぁセリーヌ! なんて美しいんだ……! このまま誰の目にも晒さずに閉じ込めておきたい!」
控室に来るなり、テオドールはセリーヌの美しい装いに暫く見惚れていた。セリーヌはテオドールの大一番だからと気合いを入れて着飾っていたのだ。
それにしても彼の瞳の色のドレスはやりすぎただろうかと心配していたところに、「美しい」と称賛され、引かれていないと分かって内心ホッとしたのだった。
「閉じ込めるのはやめてください。テオドール様の晴れ姿を、わたくしにも見守らせてくださいませ」
クスクスと笑いながら答える。テオドールはその長い脚を数歩だけ動かし、あっという間にセリーヌの目の前にやってくると「テオと呼んで?」と甘く囁いた。
突然の甘い空気にセリーヌは照れて俯く。そこへすかさず額にキスが降ってきた。
「ひゃっ!」
「美しいセリーヌに、『テオ』と呼ばれたいのです。さぁ私の瞳を見て?」
「……テオ! い、行かなくちゃ。みなさん待っています!」
「……嫌です。こんなに可愛いセリーヌを他の男に見せられない! このままセリーヌを持ち帰りたい!」
そう地団駄を踏む彼は、とっても可愛かった。何度かキスを許して、「テオだけとしか見つめ合わない」と謎の約束をさせられて、やっと立太子の儀を行う会場へと入れたのだった。
*
「今日この時より、第二王子テオドールが我が国の王太子である!」
国王陛下の宣言に歓声が上がる。テオドールはセリーヌの手を引き、参列している王族や来賓、国内の主要貴族の前に立った。
「知っての通り私は幼き頃より身体が弱かった。このまま朽ちる命だと絶望していた。だが、ルヴィエ公爵家のセリーヌと婚約し、彼女の愛の献身によって私の身体は生まれ変わった!」
(な、何だか上手く美談にされている……?)
セリーヌが内心慌てているのをよそに、王室ロマンスに人々は沸く。
「セリーヌが兄と離れ私と婚約してくれた幸運を、私は神に感謝する! そしてこの長らえた命は、セリーヌと国民の為に捧げるとを誓おう!」
歓声と拍手に包まれ、笑顔で手を振るテオドール。セリーヌは照れながらテオドールをちらりと見る。すると甘い瞳と目が合い、彼女の頬は、ますます赤く色づいてしまったのだった。
前日までしとしとと雨が降っていたが、今日は雲一つない青空。新しき王太子の門出を、天も祝福してくださっているようだ。
第二王子テオドールは国王陛下に跪き、冠を頭上に戴く。
赤いマントを羽織ったテオドールは、鍛えているせいか体つきもがっしりし始めていて、とても元病弱には見えない。それどころか、神々しく威厳もあり、王太子たる空気をすでに放っている。
(さっきまであんなに駄々をこねていらしたのに、流石ね……)
セリーヌは堂々としたテオドールの佇まいを側で見守りながら、つい先ほどまでの彼を思い出していた。
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「あぁセリーヌ! なんて美しいんだ……! このまま誰の目にも晒さずに閉じ込めておきたい!」
控室に来るなり、テオドールはセリーヌの美しい装いに暫く見惚れていた。セリーヌはテオドールの大一番だからと気合いを入れて着飾っていたのだ。
それにしても彼の瞳の色のドレスはやりすぎただろうかと心配していたところに、「美しい」と称賛され、引かれていないと分かって内心ホッとしたのだった。
「閉じ込めるのはやめてください。テオドール様の晴れ姿を、わたくしにも見守らせてくださいませ」
クスクスと笑いながら答える。テオドールはその長い脚を数歩だけ動かし、あっという間にセリーヌの目の前にやってくると「テオと呼んで?」と甘く囁いた。
突然の甘い空気にセリーヌは照れて俯く。そこへすかさず額にキスが降ってきた。
「ひゃっ!」
「美しいセリーヌに、『テオ』と呼ばれたいのです。さぁ私の瞳を見て?」
「……テオ! い、行かなくちゃ。みなさん待っています!」
「……嫌です。こんなに可愛いセリーヌを他の男に見せられない! このままセリーヌを持ち帰りたい!」
そう地団駄を踏む彼は、とっても可愛かった。何度かキスを許して、「テオだけとしか見つめ合わない」と謎の約束をさせられて、やっと立太子の儀を行う会場へと入れたのだった。
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「今日この時より、第二王子テオドールが我が国の王太子である!」
国王陛下の宣言に歓声が上がる。テオドールはセリーヌの手を引き、参列している王族や来賓、国内の主要貴族の前に立った。
「知っての通り私は幼き頃より身体が弱かった。このまま朽ちる命だと絶望していた。だが、ルヴィエ公爵家のセリーヌと婚約し、彼女の愛の献身によって私の身体は生まれ変わった!」
(な、何だか上手く美談にされている……?)
セリーヌが内心慌てているのをよそに、王室ロマンスに人々は沸く。
「セリーヌが兄と離れ私と婚約してくれた幸運を、私は神に感謝する! そしてこの長らえた命は、セリーヌと国民の為に捧げるとを誓おう!」
歓声と拍手に包まれ、笑顔で手を振るテオドール。セリーヌは照れながらテオドールをちらりと見る。すると甘い瞳と目が合い、彼女の頬は、ますます赤く色づいてしまったのだった。