俺がこの世で一番愛してる人
「育てたのは父さんと母さんだろ」
「俺だって、小さいリュカのオムツ替えとかしたんだからな?」
「そうか」
「そうか、って冷たいな。小さい頃は兄さん、兄さんって俺の後ろをくっついてきてあんなに可愛かったのに、いつの間にこんなに太々しく育ったんだ。兄さんは悲しいな」
兄さんが目元に手をあて、泣くふりをする。
いい大人が何をしてるんだ、と俺はため息をつく。
「うるさいよ。それよりも、治癒魔法を教えてくれ」
「そうだった。リュカとこんなに話すの久しぶりだったから、楽しくて忘れてたよ」
「忘れないでくれよ。それを教えてもらいたくて来たんだから」
「悪かった。じゃあ、早速始めるか」
兄さんのその一言で、治癒魔法の授業のようなものが始まる。
兄さんの教え方が上手なのと、意外と俺にも才能があったらしく、日を跨ぐ前に、命に関わる程のものでない傷なら治せる程度の治癒魔法を習得することができた。
「思ってたよりも使えるようになるの早かったね。数日かかるかと思ってたよ」
「兄さんが教えるのが上手なおかげだ」
「リュカに才能があったんだよ」
昔から兄さんはものを教えることが上手で、衛兵なんかより教師になればよかったのに、と今でも思う。
「教えてもらえて助かったよ。ありがとう」
「可愛い弟の頼みだからね」
帰ろうとすると、「たまには泊まっていったらどうだ」と言われるが、それを断り家に帰る。