俺がこの世で一番愛してる人
「なんの、用ですか?」
「君の様子を見に来たんだ。あまりにも怪我が酷いようだったら治療しないとと思って」
「一体なんのために……?」
「それは……」
そう疑問に思うのは当然だろう。
見ず知らずの男が様子を見に来た上に、治療まですると言ってくるのだから。
けど、ここで君のことが好きだからと伝えるのはいかがなものだろう。
ほぼ接点のない男から好意を寄せられるのは彼女にとって怖いのではないだろうか。
恋愛経験が全くないせいで、女性のことがよくわからない。
告白は何度かされたことはあるが、好きでもない人と付き合うのは気が引けてすべて断ったし、その後彼女達との関わりも絶っていたのを少し後悔する。
いや、ここは素直に伝えよう。
嫌がられるかもしれないし、気持ち悪がられるかもしれない。
けれど、この気持ちを隠したまま彼女とこれから接していけば、いつかボロが出る。
それなら今伝えた方が、まだ誠実なのではないだろうか。
しかし好きと伝えようとすると、やはり緊張してしまうもので、顔に熱が集まるのを感じる。
よし、言うぞ。
「こんな時に何言ってるんだって思うかもしれないけど、君に一目惚れしたんだ。好きだから、より助けてあげたいって思った」
彼女が不思議そうに俺を見る。
俺の顔の方が上にあるので、必然的に上目遣いになっている。
本当にこんな状況でなんだが、そんな彼女を可愛いと思ってしまう。
いや、それよりも俺が敵意を持っていないことを彼女に信じてもらわないとだ。