俺がこの世で一番愛してる人
 多分綺麗に治せたと思い、治癒魔法をやめる。


「多分治ったと思うけど、大丈夫?」

「……はい。治りました。……ありがとう、ございます」

「お礼を言われるようなことじゃないよ。もうそろそろオリバーが帰ってくるかもしれないから、今日はこれで失礼するよ」


 彼女は何か驚いているようだが、もうこの場を離れないとオリバーが帰ってくると思い、扉に向かう。


「絶対にここから助け出してみせるから」


 ドアノブに手をかける前に振り返りそう言うと、彼女は口元をきゅっと噛んでいた。
 そのままこちらをじっと見ていたので、笑顔を作り言葉を続ける。


「また来るから、その時は俺の話し相手にでもなってよ。じゃあね」


 そう言ってから部屋を出る時に見た彼女は、やはり同じ表情で俺のことを見ていた。

 そんな顔ですら可愛いと思ってしまう。

 自分でも気づかないうちに相当、彼女のことが好きになってしまったらしい。
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