俺がこの世で一番愛してる人
 多分、兄さんだろう。


「タイミング悪いな」


 小さく呟くと、「リュカ入るよ」と言って入ってきたのは、やはり兄さんだった。


「お邪魔しちゃったかな?」


 俺と彼女を見て兄さんが言う。

 ああ、本当にだ。
 あともう少しでキスできるところだったのに。
 なんてタイミングが悪いんだろう。

 そう不満に思っていると、彼女が慌てて離れようとするが、今度は離さない。


「リュカ、恥ずかしいから離して」


 彼女は恥ずかしがっているが、折角いちゃついていたのを邪魔されたのが少し不満なので離さない。

 まだこうしてくっついていたい。

 彼女は俺から離れようとするが、俺の方が力が強いのでびくともしない。
 そんな俺達を見て兄さんがくすくすと笑う。


「それにしても、リュカが元気そうでよかったよ」

「おかげさまで。あの怪我、兄さんが治してくれたんだろ?」


 負傷してすぐ気を失ったせいで、自分の怪我の具合はあまり把握していないが、兄さんの腕なら、どんな怪我でも余裕で治せるだろう。


「まあね。それにしてもお前、本当に危なかったんだぞ? あともう少し傷が深かったり、着くのが遅れてたら死ぬところだったんだからな」

「そんなに危険な状態だったのか……。治してくれてありがとう」

「どういたしまして」


 思っていたよりも酷かったらしく驚く。
 現地でテキパキ動いてくれたであろうイアンや他の仲間達にも感謝しなくては。
< 33 / 42 >

この作品をシェア

pagetop