俺がこの世で一番愛してる人
 すると彼女が俺の胸に顔を寄せてくる。


「……っ。あんまり可愛いことしないで。これでも俺、色々と抑えてるんだから」

「抑えてるって何を?」


 そんな答えづらいことを聞かないでくれ。

 純粋なこの子のことだ。
 キスより先のことなんて知らないだろう。
 しばらくは手を出すつもりはないし、あまり煽らないでほしい。

 俺が必死に自分を抑えていると、兄さんがくすくすとまた笑う。

 きっと俺の状態を察してるだろうから、この姿を兄さんに見せるのは少し恥ずかしい。


「弟の元気そうな姿を見て安心したし、兄さんはこれで失礼するよ。二人の邪魔するのもなんだし」


 兄さんが扉に向かう。
 部屋を出る直前、何かを思い出したかのように振り向く。


「あ、一応しばらくは安静にすること。わかった?」

「ああ、わかったよ」

「じゃあ、お大事に」


 今度こそ兄さんは出て行く。

 逆効果な気もするが、自分を落ち着かせるために彼女を抱く力を少し強くする。
 彼女もそれに応えるように背中に手を回してくる。

 あ、やっぱり駄目だ。
 これじゃあ、収まるものも収まらない。

 一度離れようとしたところで、彼女が口を開く。
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