となりの席の読めない羽生くん
「みんなかわいいよ。」
羽生があっけらかんと言って、わざとらしく微笑んだ。
「なんだ〜…」
「でも俺、今あんまり誰とも付き合う気ないんだよね。」
「えー!なんでなんで〜?」

「次に付き合う子とは、できれば結婚したいから。」

「え」
(え)
「高校生でそれはちょっと重くない?」
周りを囲んでいた女子が少し引いたような空気になったのを見て、葉月は羽生の考えを理解した。
「だよね?だから今は彼女いらないんだよね。」
羽生は笑って言った。
「焼きそばあったよね、作ろうかな。」
羽生が立ち上がってコンロの方に戻っていくと、女子たちもついていった。
「結婚だって〜」
他の女子たちと一緒に葉月のそばに戻っていた茅乃が、葉月に言った。
「ははは、すごいね」

(あんなの、女子の興味を削ぐための嘘でしょ。)

(みんな“結婚”なんてセンセーショナルなワードに気を取られてるけど、今の発言のポイントは“次に”ってとこよね。次ってことは前があるってことじゃん。しかも彼女作りに困ってなさそう。やっぱり恋愛上級者…)

(あ、お弁当の子が“彼女じゃない”って、もしかして“婚約者”?結婚てあながち嘘じゃないのかも…?)
< 28 / 73 >

この作品をシェア

pagetop