となりの席の読めない羽生くん
「箱根って美術館もいくつかあるよね。」
「ああ、そうだっけ。そういえばクチコミにもあった気がする。」
「行けたら行きたいな。」

「ん〜…今回の旅行ではそういうのやめない?」

翔馬は苦笑いのような顔で言った。
「そういうの?」
「美術館とかギャラリーとか、いつも行ってるじゃん。」
「でも、箱根の美術館は箱根でしか…」
「温泉でのんびりしてさ、美味いもの食べる旅行にしよ?」
「………うん、そうだね。」

その日のデートは、翔馬の観たい映画を観て、翔馬の食べたいものを食べ、翔馬の買い物をした。
(………)


翌週の土曜もまた、葉月は翔馬と出かけていた。

「え…メガネ…?」
この日、葉月はメガネをかけていた。もちろん、翔馬が嫌な顔をするのは予想の範疇だ。
「今日の美術館、少し暗いみたいだからメガネで行きたいの。」
「着いてからかけたらいいじゃん。」
「ケース忘れちゃった。ごめんね。」
「まぁ…しょうがないか。今日一日だけ。」

翔馬は溜息を()いた。
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