となりの席の読めない羽生くん
「出るのが遅かったから、ランチ終わっちゃってるかな。」
葉月が言った。

「どうかな。何食べたい?」

「……この辺においしい洋食屋さんがあるらしいよ?」

「洋食か〜…だったらさ、水端(みずはし)町の方にあるハンバーガー屋さん行かない?」
翔馬は笑顔で言った。

「ハンバーガー…」

「美味いらしいよ?」

「私…今日はパスタとか…そういう系の洋の気分なの。ダメかな…」

「なんで?ハンバーガーでもいいじゃん?」
翔馬が不機嫌になる。

「今日は葉月の行きたい展覧会に行くんだから、食事くらい俺が決めてもいいよね?」

「………先週は…」

葉月がポツリと言った。

「え?」
「先週は翔馬くんが観たい映画で、翔馬くんが行きたいご飯で、翔馬くんの買い物だったよ?」
翔馬はムッとした。
「なにそれ。行き先決めるのとかめんどくさいでしょ?それを決めてあげてるんだよ?」
「…決めてほしいって言ってない。相談して決めたい…」

———ハァ〜ッ

翔馬は大袈裟とも感じられる、大きな溜息を()いた。

「ちょっと来て。」
「え…っ、ちょ…翔馬くん!?」
翔馬は葉月の腕を掴んで路地に引っ張っていくと、壁ぎわに葉月を立たせて向かい合った。

葉月の心臓はバクバクと早い鼓動を奏でている。
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