となりの席の読めない羽生くん
「今日、助けてくれてありがとう。パスタ食べてる時すごくホッとした。羽生くんとユウスケくんとご飯食べてるって不思議な感じだったけど。」

葉月は思い出して「ふふっ」と笑った。

「あ、そうだこれ…」
葉月はバッグからミュージアムショップの袋を取り出した。

「家族のお土産?」
葉月はまた「ふふ」と笑った。
「違うよ。」
そう言って葉月は袋を開けると、厚みのない何かを取り出した。

「ステッカー?」
「うん、一澤 蓮司のね。これ…大したものじゃないけど今日のお礼に。羽生くんの分とユウスケくんの分…と、私の分も買っちゃった。」
葉月がテーブルに並べたのはイチゴと洋梨とレモンのステッカーだった。
「お礼なんていらないけど、侑輔がすっげー喜ぶと思うから遠慮なくいただきます。ありがとう。」
「うん、好きなの選んで。」
葉月は両手で頬杖をつきながら笑顔で言った。
「じゃあ…洋梨とレモン。」
「じゃあ私はイチゴだ。どこにつけようかな…」
「これ、侑輔が家族以外に料理出して初めて貰った報酬。」
「え!報酬って言うには安すぎるよ…普通にお金払いたいくらいだった。」
「プロじゃないから、こういうのがありがたい。」
羽生は手に持ったステッカーをながめながら言った。

「羽生くんは?」
「ん?」
「羽生くんはお店で料理出したりしてるの?」
「たまにね。まだ全然だけど。」
「あんなに上手なのに。」
「父さんの味にはなかなか追いつかない。荻田も今度ちゃんと食べにおいでよ。」
「…うん…。」

「そうだ荻田、LIME教えてくんない?」
別れ際に羽生が言った。
「う、うん…」

(なんか今日…羽生くんとの距離感がバグってる…)
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