となりの席の読めない羽生くん
———ブー…ッ

葉月のポケットでスマホが鳴った。LIMEのメッセージだ。

差出人の表示を見て、葉月の心臓が跳ねた。

【羽生 晃一】

(え、なんで今…?)
葉月はメッセージを開いた。

【ちょっと出れない?】

“出れる”と返信したくても、羽生とLIMEのやりとりをしているのがバレてしまいそうでなかなか返せない。

【荻田、5分くらいしたら外出て自販機のとこにいて】
【俺もその5分後くらいに行く】

(………)
葉月は返信せずに、5分間部屋の時計をジッと見つめていた。

5分後
「あ、私、別クラの子に呼び出されたからちょっと出てくる…」
葉月はスマホを見ながら言った。

(自販機のとこ…)

ドリンクコーナーで、葉月は落ち着かない気持ちで羽生を待っていた。
「お待たせ」

———ブー…ッ

羽生が来るのとほぼ同時に、茅乃からLIMEが来た。
“がんばって”と書かれたクマのスタンプだけが送られてきた。
葉月と羽生がタイミングを合わせて部屋を出たことに気づいたようだ。
(がんばってって…何を…)

「ちょっと外出ようか。」
スマホを見ながらあれこれ考えていたが、羽生に言われてハッとした。
「あー…でも先生が見回ってるかも…」
葉月が言った。
「多分大丈夫。今頃酒盛り中だから。」
「え?なんでわかるの?そんなこと…」
「テキーラ飲まされなくて良かったね。」
「テキーラ…って、え?ひょっとして…羽生くんが何かしたの?」
羽生が含みのある笑いを見せた。

「とりあえず外出よう。」
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