だから嫌いなんだよ。

この男は再び家の中に入ってくるとニコニコしながら

「雅ちゃん」

と呼んでくる。
何か用があるのかと思い振り向くとただニコニコしてるだけ。なんなんだ。

「なにか用ですか?
ないなら呼ばれたくないです。」

冷たく言い放つとまた落ち込んだ顔をする。
私ってこんなに冷めた性格の悪い人間だったんだなと実感した。

「あの、ほんとに移るんで近くに来ないでほしいんですけど。」

と言うと

「雅ちゃんの熱俺に移していいんだよ」

ととんでもないことを言い出した。

「雅ちゃん辛そうだから嫌だよ
俺が代わるよ」

「いや、いいです。
もう喋らないでください」

私がそう言うと早速喋らなくなった。

ただずっとニコニコしてた。
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