犯人が与えてくれたもの
Cブロックに戻ると、中西くんがいた。中西くんは既に、失敗したようだった。防カメ班もそろそろ限界だと考えられる。私はゆっくり中西くんの方に近づき、小声でこう伝えた。
「大丈夫?防カメ室の前で待機して」
「でも」
「君は、防カメ班を守って」
「了解」
中西くんは、防カメ班の元に去っていった。
私は、危機感を覚えた。破水中の女性1名に、武装者。武装者は、何やら強そう。でも、やってみなきゃ始まらない。でも、ただ単に正面衝突するだけじゃ倒れない。
あ!
私は仲間の元に近寄って、小声でこういった。
「建造さん、後ろに配置確保してください。前田さん、正面の拳。私は、正面蹴り」
分かりやすく翻訳させてもらおう。健造さんは、後ろで逮捕するために待機していてください。前田さんは、正面からパンチをしてください。私は正面から蹴りを入れます。
「了解」
犯人に怪しまれないように、場所をゆっくり変えてゆく。その所要時間、およそ3分。警備員としてのテクニックを駆使し、上段の蹴りと下段の突きを入れれば、隙は無い。
後ろに倒せれば、確保は簡単だ。確保の後、母体を救急搬送できる。
作戦は実行され、無事にバックヤードの武装者も確保できた。そんな時だ。
「中西より各局、拘束されました」
「安田了解」
私達は、バックヤードの気絶した武装集団の1人を控室で拘束した。
私達は顔を見合わせ、バックヤード担当の2人が、Bブロックの職員に引き継いだ後、共に出動した。
不審物は、残り5分を示している。そこまでに全員を避難させなければならない。
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