犯人が与えてくれたもの
バックヤードに連れて行くと、彼は泣いて謝り始めた。
「俺、食べるもの無くて。チョコとか非常食系でなんとかやってきたんですけど、どうしても腹が減って。しかも今日、バレンタインデーの前日だからチョコ売り場に人がたくさんいて、紛れるかと思ってやりました」
「なるほど・・・」
「ごめんなさい」
「とりあえず、今回は見逃してあげます。大変かと思いますが、頑張ってください」
「あ、ありがとうございます・・・」
「では、行きましょう」
「はい」
私は考えた。万引きの意思があって万引きしているが、こう対応せざるを得ない。それは、正しいことなのだろうか。
「では、私はこれで失礼します」
「はい、ありがとうございました」
そうすると、中西くんが声をかけてきた。
「先輩、ちょっと良いですか?」
「どうした?」
「実は、さっき、入口にこんなものが・・・」
「ん?」
確認をすると、ショッピングセンターを武装集団が襲撃するという内容だった。
「いつ?」
「9時35分頃です」
私は無線で確認をした。
「安田から防カメ係へ。本日9時35分、入口付近に不審な紙を置いた人物を特定し、転送せよ」
「防カメ係了解」という返事が返ってきた。
私は彼に伝えた。
「不審物や不審者を見つけたら、自分含めた報告を無線入れてから自己対処。これ基本だから」
「はい。ありがとうございます」
そして、またもや万引き犯が現れた。
「防カメ班より、中西・安田。現在、カゴ前にいる女性客が挙動不審な動きをした後、バッグにチョコを入れました。店を出次第、確保してください」
「安田了解」
「中西了解」
その女性のことを私達は警戒し続けた。
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