彼女の夫 【番外編】あり
「ランチに行ってくるわね」
病棟のクラークにそう伝えて、私はいつも通りメディカルセンターの外に出た。
センターの中にもカフェがあり、スタッフはチャージフリーで食事が取れるのだが、私は外に出ることがほとんどだった。
ビーチ沿いに停まっているキッチンカーでランチボックスを買い、ベンチで海を見ながらのんびりと食事をする。
午後の診療予定や、入院中の患者さんのことを考えることが多いものの、ふと、彼のことが頭に浮かんだ。
どうしてるかな・・。
でも、もう彼の隣には別の───。
ピピッピピッピピッ。
ポケットから注意を促すアラート音が聞こえる。
センターからの呼び出しだ。
「どうしたの?」
「アオイ、すぐ戻ってきて。ブライアンの担当患者さんが急変したのだけど、彼はナイトシフトだし、外来も混んでいてドクターが足りないの」
病棟のナースが切羽詰まった声で捲し立てる。
「分かった、すぐ戻るから」
食べ終えたばかりの空のランチボックスを片手に、センターに走る。
『蒼』
えっ?
『蒼、あんまり頑張りすぎるなよ』
波の音の合間に、彼の囁きが聞こえた気がした。
あれから・・彼とロサンゼルスで別れてから、もう1年近く経とうとしているのに、彼はずっと私の心の中に居続けている。
ふと立ち止まり、彼を想った。
責任感が強くて・・優しくて・・笑顔がやわらかくて・・。
まだ当分、彼を忘れられそうにない。
「玲生さんも、無理しないで・・」
海に向かって呟いてから、私は患者さんのもとへ向かった。
病棟のクラークにそう伝えて、私はいつも通りメディカルセンターの外に出た。
センターの中にもカフェがあり、スタッフはチャージフリーで食事が取れるのだが、私は外に出ることがほとんどだった。
ビーチ沿いに停まっているキッチンカーでランチボックスを買い、ベンチで海を見ながらのんびりと食事をする。
午後の診療予定や、入院中の患者さんのことを考えることが多いものの、ふと、彼のことが頭に浮かんだ。
どうしてるかな・・。
でも、もう彼の隣には別の───。
ピピッピピッピピッ。
ポケットから注意を促すアラート音が聞こえる。
センターからの呼び出しだ。
「どうしたの?」
「アオイ、すぐ戻ってきて。ブライアンの担当患者さんが急変したのだけど、彼はナイトシフトだし、外来も混んでいてドクターが足りないの」
病棟のナースが切羽詰まった声で捲し立てる。
「分かった、すぐ戻るから」
食べ終えたばかりの空のランチボックスを片手に、センターに走る。
『蒼』
えっ?
『蒼、あんまり頑張りすぎるなよ』
波の音の合間に、彼の囁きが聞こえた気がした。
あれから・・彼とロサンゼルスで別れてから、もう1年近く経とうとしているのに、彼はずっと私の心の中に居続けている。
ふと立ち止まり、彼を想った。
責任感が強くて・・優しくて・・笑顔がやわらかくて・・。
まだ当分、彼を忘れられそうにない。
「玲生さんも、無理しないで・・」
海に向かって呟いてから、私は患者さんのもとへ向かった。