彼女の夫 【番外編】あり
「じゃ・・あ。すみません、遠慮なく」
「はい。あとこれも・・濡れたものを入れるのに使ってください」
女性は小さなビニール袋もくれた。
俺はまずタンブラーの蓋をギュッと締め直した後、バッグ表面のコーヒーを拭き取った。
撥水コートされていることもあり、特に問題は無さそうだ。
女性が教えてくれたおかげで、電車の床にもスーツにもこぼれずに済んだのが幸いだった。
助かった・・。
そう思った瞬間に女性は席を立ち上がり、開いた扉からホームに降りようとしていた。
「あのっ・・」
お礼を伝える間もなく、女性は電車から遠ざかって行く。
『優しい女性』
そんな印象だけを俺に残していった。
右隣に座っていた女性は、俺がコーヒーをこぼしたことを知ってあからさまに嫌な顔をしていた。
自分にも、何か被害が及ぶと思ったんだろう。
ほとんどコーヒー色になってしまったタオルを眺めながら、いつかまた、奇跡的に会えたりしないだろうかと考えていた。
とはいえ、こんな数分の出来事で、次に会った時にお互い気づくだろうか。
電車では横並びに座っていたし、面と向かって顔を見たわけでもない。
さすがに無理かな・・。
いつの間にか会議は終わっていたようで、イヤホンから流れてくる音声も無くなっていた。
電車もオフィスの最寄り駅に着き、俺はあの女性とのやりとりを思い出しながら、機嫌よくオフィスに戻った。
「はい。あとこれも・・濡れたものを入れるのに使ってください」
女性は小さなビニール袋もくれた。
俺はまずタンブラーの蓋をギュッと締め直した後、バッグ表面のコーヒーを拭き取った。
撥水コートされていることもあり、特に問題は無さそうだ。
女性が教えてくれたおかげで、電車の床にもスーツにもこぼれずに済んだのが幸いだった。
助かった・・。
そう思った瞬間に女性は席を立ち上がり、開いた扉からホームに降りようとしていた。
「あのっ・・」
お礼を伝える間もなく、女性は電車から遠ざかって行く。
『優しい女性』
そんな印象だけを俺に残していった。
右隣に座っていた女性は、俺がコーヒーをこぼしたことを知ってあからさまに嫌な顔をしていた。
自分にも、何か被害が及ぶと思ったんだろう。
ほとんどコーヒー色になってしまったタオルを眺めながら、いつかまた、奇跡的に会えたりしないだろうかと考えていた。
とはいえ、こんな数分の出来事で、次に会った時にお互い気づくだろうか。
電車では横並びに座っていたし、面と向かって顔を見たわけでもない。
さすがに無理かな・・。
いつの間にか会議は終わっていたようで、イヤホンから流れてくる音声も無くなっていた。
電車もオフィスの最寄り駅に着き、俺はあの女性とのやりとりを思い出しながら、機嫌よくオフィスに戻った。