彼女の夫 【番外編】あり
「ごめん・・は、もういらないから何か他の言葉がいいな。昨日から一緒にいて、その終わりが『ごめん』は寂しいから」

彼女は少し悲しげに微笑んだ。

「あ・・」

また『ごめん』と言いそうになり、その言葉を飲み込む。
何を言えばいいだろうと考えながら、気持ちの中にある想いをそのまま口にした。

「本当は、もっと一緒にいたい・・。でも・・」

「でも?」

「それは、俺のわがままだから」

思わず目を伏せた。
彼女にどう思われるのか、そしてその表情を見るのが・・怖かったから。


ふわっ。


やわらかい感触に、顔を上げた。
ああ、抱き締められてる。

「私が玲生さんのわがままを受け止めたら、玲生さんには迷惑なのかな・・。誰か、他に相応しい人がいるのかもしれないけれど・・」

「・・え?」

「まだ、一緒にいられる」

「・・あとどのくらい?」

彼女の顔が耳元まで降りてきて、『玲生さんは、いつまでがいい?』と囁いた。

そんなふうに聞かれるとは思わなかった。
例えばあと2時間とか、彼女から期限を提示されたら、それに沿うつもりだったから。

「いつまで・・なんて聞くなよ」

「えっ」

「ずっと・・って、言いたくなる。でもそんなこと言ったら、蒼さんを困らせるだけだよ」

彼女を見上げたまま、そう伝えた。
『玲生さん・・』と、声にならない囁きが聞こえた。


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