彼女の夫 【番外編】あり
その夜、彼女からは何の連絡も無かった。
それは偶然なのか、自分の夫から・・あの編集者から『妻から手を引けと伝えた』と聞かされたからなのかは、分からない。
日付が変わる頃に弟は帰っていき、その後ベッドに横になったものの朝まで一睡もできずにいた。
かすかにだけれど、ベッドのあちこちに彼女の香りが残っているような気もして辛かった。
この家で、このベッドで過ごした時間は何だったのか。
ほんの2か月ほどだったけれど、お互いを想い合っていたのだと信じて疑わなかった。
もしかしたら、何か意図があったのだろうか?
でもこれ以上、安易に彼女に近づくわけにはいかない。
これ以上、会社のイメージを悪くするようなことになってはいけない。
それにしても・・だ。
深いため息をついた。
「今日・・休んだら怒られるかな・・」
河本や高澤の顔が浮かんでは消える。
さすがに、今朝は苦しさで心が埋め尽くされた。
7時を回ったところで、ベッドサイドに置いていたスマートフォンが振動した。
そこには河本の名前が表示されている。
「もしもし・・」
『社長、早朝から申し訳ありません。専務からだいたいのことは伺いまして・・今日はご自宅で業務されてはいかがですか?』
「えっ・・でも」
『お昼前にランチがてら様子を見に行きますから。何か必要なものがあれば連絡ください。あ、今回のことは、ひとまず専務と私しか知りませんのでご安心を。では、また後ほど』
通話の切れたスマートフォンを枕元に置き、俺はふたりの気遣いに甘えることにして布団に潜り込んだ。
それは偶然なのか、自分の夫から・・あの編集者から『妻から手を引けと伝えた』と聞かされたからなのかは、分からない。
日付が変わる頃に弟は帰っていき、その後ベッドに横になったものの朝まで一睡もできずにいた。
かすかにだけれど、ベッドのあちこちに彼女の香りが残っているような気もして辛かった。
この家で、このベッドで過ごした時間は何だったのか。
ほんの2か月ほどだったけれど、お互いを想い合っていたのだと信じて疑わなかった。
もしかしたら、何か意図があったのだろうか?
でもこれ以上、安易に彼女に近づくわけにはいかない。
これ以上、会社のイメージを悪くするようなことになってはいけない。
それにしても・・だ。
深いため息をついた。
「今日・・休んだら怒られるかな・・」
河本や高澤の顔が浮かんでは消える。
さすがに、今朝は苦しさで心が埋め尽くされた。
7時を回ったところで、ベッドサイドに置いていたスマートフォンが振動した。
そこには河本の名前が表示されている。
「もしもし・・」
『社長、早朝から申し訳ありません。専務からだいたいのことは伺いまして・・今日はご自宅で業務されてはいかがですか?』
「えっ・・でも」
『お昼前にランチがてら様子を見に行きますから。何か必要なものがあれば連絡ください。あ、今回のことは、ひとまず専務と私しか知りませんのでご安心を。では、また後ほど』
通話の切れたスマートフォンを枕元に置き、俺はふたりの気遣いに甘えることにして布団に潜り込んだ。