彼女の夫　【番外編】あり
ピンポーン♪

インターホンの音がかすかに聞こえた気がして、目を開けた。
寝室の時計を見ると１０時半を指している。

「･･嘘だろ。完全に寝過ごした･･」

慌てて飛び起きてインターホンのモニター画面をのぞくと、もう玄関ドアの前に河本がいた。

「どうぞ･･」

河本には鍵を渡してあり、着替える時間すら無いままパジャマ姿で迎えた。

「社長、少しは寝れましたか？　専務が、おそらく朝まで寝れないだろうと心配されていて」

「ああ、おかげさまで。こんな格好ですみません」

「いえ。今のところ、関連した問い合わせや記事も無いようですよ。良かったですね」

それを聞いてホッとした。
会社に影響が無いなら何よりだ。

河本がブランチに持ってきた食事をとりながら、急ぎの手続きが無いか確認した。

「面会の予定は全てリスケしてあるのと、午後の会議は明日に回しています。たった１日しか余裕が作れなくて申し訳ないですが、せめて今日はゆっくりしてください。もうずっとパジャマのままで」

「･･はい」

「あ、そうだ。例の編集者と医師については、少しだけ専務と調べてみます。何かウラがあるかもしれないので。秘密裏に動きますので、ご心配なく。じゃ」

バタン、と玄関ドアが閉まる音がした。


俺はダイニングテーブルにパソコンを出してざっとスケジュールや社内の状況を確認する。
本当に今日の予定はまっさらだ･･。

残りの食事をつまんだ後、俺はソファに寝転がり目を閉じる。
普段の睡眠不足もあって、すぐ眠りに落ちた。


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