彼女の夫 【番外編】あり
翌日出社すると、ビルのエントランスに掲示が出ていた。

『隣接しているビルのクリニックフロアは、改装のため今月末まで閉鎖します』

偶然にしてはタイミングがいいな・・。
これならニアミスする可能性も無いわけだ。

今はまだ、どんな顔をして彼女に対峙すればいいか分からずにいる。

気持ちは、まだ複雑だった。
というより、かなり不安定だ。
自分が思うよりも、ダメージが深いらしい。

時間が経つごとに、自分のした事が悔やまれてならない。


彼女は・・・・大丈夫だろうか。


こんな、どうしようもない状態になっているのは俺だけだろうか。

あの編集者に、傷つけられていないだろうか・・。


いや、ダメだ。
考えるだけで囚われてしまう。
しっかりしなければ。


コンコンコン。
社長室のドアが開き、高澤が入って来る。

「おはようございます、社長。体調いかがですか?」

「ん?」

「あ、河本部長から、珍しく社長が熱を出されたと聞いて。今日も面会や外出はナシにして、社内の会議だけに調整してあります」

「そうか、すまないな。まだ少しボーッとしているような気がするから、そういう時は声を掛けてくれないか?」

ニッコリと頷いた高澤は、手にしていた書類を俺に手渡して社長室を出ていく。

いつも通りに書面の契約内容を確認し、いくつか確認事項をメモしているとガチャッと社長室のドアが開いた。

「親父・・」

「会長、だろ? それより大丈夫か、直生から聞いたぞ」

俺は俯いて小さく笑った。
何なんだ、次から次へと。

こんなに心配される存在だったのかと、自分でも驚いた。


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